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ハーグ条約に基づく子の返還の裁判についての判決 ~最高裁第一小法廷令和2年4月16日判決~

最高裁は、調停で子の返還について合意をしても、事情の変更により調停の合意は変更できる旨を判示しました。この案件では、LBP(本国の親)がロシア国籍、TP(子を連れ去った親)が日本国籍とのことで、LBPが子をロシアから日本に連れ去った案件とのことです。最高裁は、第二審の東京高裁の決定を破棄し、東京高裁に審理を差し戻しました。

ハーグ条約実施法1171項は、「子の返還を命ずる終局決定をした裁判所(その決定に対して即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定(第百七条第二項の規定による決定を除く。以下この項において同じ。)をしたときは、当該抗告裁判所)は、子の返還を命ずる終局決定が確定した後に、事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至ったときは、当事者の申立てにより、その決定(当該抗告裁判所が当該即時抗告を棄却する終局決定をした場合にあっては、当該終局決定)を変更することができる。ただし、子が常居所地国に返還された後は、この限りでない。」と規定しています。

 条文上、「決定」を変更と規定されていますが、調停での「合意」も変更可能だと最高裁が判示したことになります。

 最高裁は、アメリカのミネソタから子ら4人が連れ去られたケースで、子の返還の大阪高裁の決定が確定した後、ハーグ条約実施法117条の1項により、事情の変更を認めています(最高裁第一小法廷20171221日)。

今回の416日の判決では、調停での「合意」の場合にも、事情の変更を認めると判示されました。

 今回の416日の判決のケースでは、子がロシアに帰りたくないと訴えたために、事情の変更を認めたということです。

 具体的な事情はわかりませんが、子の意見も踏まえて調停で合意に至ったのだとしますと、子が帰りたくないと訴えさえすれば、事情の変更が認められるとすると合意の意味もなくなってしまうともいえます。迅速な子の返還を原則とするハーグ条約の趣旨の観点からは、考える余地のある判決といえます(私見です)。

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