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弁護士法人キャストグローバル 川口支店
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外国人の夫(妻)をもたれた日本の方が離婚を考える際に、協議離婚が成立しない場合、まず考えなければならないのは、日本で調停・裁判をすることができるかどうかということです。
たとえば、妻が日本人、夫がオーストラリア国籍であり、夫婦が日本に居住していたものの、夫が一人でオーストラリアに帰国してしまった場合、日本とオーストラリアのどちらの国の裁判所が離婚を扱うことができるかが問題となります。
このように、国際的な案件に関連のある複数の法律・国のうち、どこの国の裁判所がその案件を扱うことができるかという問題が国際裁判管轄の問題です。
ここでは、国際裁判管轄についてご説明いたします。
離婚の国際裁判管轄については、人事訴訟法の改正(平成31年4月1日施行)により、法律上、定まりました。
法改正前は、下記の最高裁判所の判例により、国際裁判管轄が判断されていました。
最高裁昭和39年3月25日大法廷判決(民集18号486頁)は、原則として被告の住所地が日本国内にある場合に、日本に国際裁判管轄が認められると判示していました。
そして、例外として、被告の住所地が日本にない場合にも、
① 被告が原告を遺棄した場合
② 被告が行方不明である場合
③ その他、これに準ずる場合
には、原告の住所が日本国内にある場合には正義公平の理念から、日本(原告の居住する国)に国際裁判管轄が認められると判示されていました。
改正後の人事訴訟法3条の2は、下記のように定めています。
(人事に関する訴えの管轄権)
第3条の2 人事に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することができる。
一 身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
二 身分関係の当事者の双方に対する訴えであって、その一方又は双方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
三 身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
四 身分関係の当事者の双方が死亡し、その一方又は双方がその死亡の時に日本国内に住所を有していたとき。
五 身分関係の当事者の双方が日本の国籍を有するとき(その一方又は双方がその死亡の時に日本の国籍を有していたときを含む。)。
六 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有したとき。
七 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき、他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき。
オーツトラリア国籍の夫がオーストラリアに帰国してしまった場合のように、日本で夫婦で居住していたものの、外国人の配偶者が本国に帰国してしまったような場合には、上記の6号か7号が問題となりえます。
外国人の配偶者が行方不明であれば、7号で日本に国際裁判管轄があると考えられます。最後の共通の住所が日本国内にあれば、6号により、日本に国際裁判管轄があると考えられます。
こういったケース以外の場合にも、「日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき」(7号)には、裁判所の判断で、日本に国際裁判管轄があると考えられます。
国際裁判管轄をどこの国の裁判所に認めるかについては、法律関係ごとに決める必要があります。
Ⅰ 離婚とともに子の親権者・子の監護に関する処分、財産分与、慰謝料請求について取り決める場合、日本の裁判所が管轄を有することが、改正された人事訴訟法に規定されました。
(子の監護に関する処分についての裁判に係る事件等の管轄権)
第3条の4 裁判所は、日本の裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えについて管轄権を有するときは、第32条第1項の子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分についての裁判及び同条第3項の親権者の指定についての裁判に係る事件について、管轄権を有する。
2 裁判所は、日本の裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えについて管轄権を有する場合において、家事事件手続法(平成23年法律第52号)第3条の12各号のいずれかに該当するときは、第32条第1項の財産の分与に関する処分についての裁判に係る事件について、管轄権を有する。
(関連請求の併合による管轄権)
第3条の3 一の訴えで人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求(当該人事訴訟における当事者の一方から他の一方に対するものに限る。)をする場合においては、日本の裁判所が当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有するときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができる。
Ⅱ 離婚請求とは別に請求がされる場合には、別の規定、取り決めがあります。
子の親権・子の監護に関する処分について、離婚とは別に審判申立手を行う場合、子の住所が日本国内にあるときに、日本の裁判所が管轄を有することについて、法律で規定されました(家事事件手続法3条の8参照)。
養育費請求・婚姻費用分担請求について、扶養義務者である相手方、扶養権利者の住所、居所が日本にあるときは、日本の裁判所が管轄権を有することが規定されました(家事事件手続法3条の10)。
離婚後の財産分与についても、離婚事件と同様に、管轄が判断されます(家事事件手続法3条の12)。
離婚請求とは別に慰謝料請求の裁判を提起する場合には、被告の住所地のほか、不法行為地が日本であれば、日本の裁判所に管轄が認められます。
ここまで、国際裁判管轄についてご説明してきましたが、調停の場合、裁判・審判とは分けて考えることが必要となります。
離婚調停では、相手方の住所が日本にない場合にも、合意により国際裁判管轄が以前も認められていましたが、法律改正により、合意管轄が認められることが規定されました(家事事件手続法3条の13第1項第3号)。
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